手をだすな、タマはいじるとクセになる。
タマにしか寄らない場所へ、タマタマ寄ってタマをさわったのが始まりだった。その日から、もうタマらないくらいにタマに恋してしまい、今ではもう3日もさわらないとストレスはタマる一方、金はタマらず。コロコロと転がって穴に入るとフィニッシュ!あの感触、タマりませんなあ・・・。 「タマ」とは、中村玉緒でも佐藤珠緒でもなく、猫のタマちゃん?でもなく、はたまた、最近人気のアザラシのタマちゃんでももちろんない。それはアバタもえくぼのゴルフボールなのである。 あれは今から10年ほど前であろうか、まだ会社勤めだった私はその日仕事がヒマだった事もあり、日頃から仲のいい営業マンの納品につき合った。何社か回って最後に寄ったのがゴルフ練習場。いわゆる「打ちっ放し」だが、この日納めたのは私がデザインしたチラシで、社長がえらく気に入っていたと事前に営業マンに聞かされていた。「ちょうどいいや、社長に会っていってくれよ」と営業マンが言うので、気に入られている私としては「ああいいよ」という事で社長室へと相成った。しばらく歓談した後、社長が「今なら客もいないようだし、ちょっと打っていくかい?ああ、金ならいらないよ」と言いだした。ゴルフにはまったく興味がなく、もちろんクラブを持った経験もない私にはどうでもいいことだったが、ゴルフ好きの営業マンは大喜びである。仕事も終ったし、もう5時前(8時から5時が勤務時間だった)。「今日は残業もないし、タダならいいか」って事で生まれて初めてゴルフボールを打つことになった。 ズラリと並んだ貸しクラブの中から黒い光沢を放つ一本のドライバーを抜き取り、いざレンジへ。「最初は7番くらいがいいよ」「いやピッチングがいい」。社長も営業マンも訳の分からないことを盛んに口走っているが、ゴルフと言えばドライバーしかイメージにない私はがんとして聞かないのである。さらに「おい、しかもそれXだぜ!」と、ますます分からない事を言い出す始末。「クラブってそんなにややこしいのか、いいよ、どうせ遊びなんだから」という事で、とりあえず握りだけは教えてもらって、いよいよ記念すべき第一打である。 「カキーン!」 「素人にXは振れないよ」という社長の声をかき消すかのように、乾いた音を残した白球は遥か向こうのネットのど真ん中に掲げられた「300」という看板に突き刺さった。見ると社長も営業マンも固まってしまっている。「スゲェ・・・・」。何が凄いのか意味がよく分らなかったが、手応えはよかったし、まっすぐ飛んでいく白球は確かに気持ち良かった。 私はその時42歳、だが、若い頃は野球、30歳を過ぎてからはソフトボールに転向したものの、常に地域一部リーグのチームでクリーンアップを打っていたので、こと「飛ばす」技術は自然に身についていたものと思われる。 「あの看板に当てたやつは今まで見たことないよ」「素質あるかもよ」。この一発で社長も営業マンもしきりに誉め始めたのですっかり気をよくした私は、「本格的にやって見ようかな」などと、ついその気になってしまった。そして2打目、「?・・・・・」3打目「??・・・・」。それからというものまるで当たらない、「コノヤロー!」ますますムキになって打ちまくるが、ことごとくダフリ、シャンク、プッシュアウト、たまに芯に当っても強烈なフックボール。全部で200球ほど打っただろうか、だが、ついに前に飛ぶことはなかった。「こんなはずでは・・・」疲労困憊の私に、「ゴルフってのはそんなもんだよ・・これから先が深いんだから気長にやりな」と社長が声をかけてくれた。 「このままではやめられん!」最初の1発の感触が忘れられない私は、そのままゴルフ地獄へとすべり落ちていった。 手をだすな、タマはいじるとクセになる。
2003.5.13
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