日本人対決

 今年はやたらとこの「日本人対決」という文字がメディアのヘッドラインを飾った。野球では松井とイチロー。サッカーでは中田ヒデと中村俊輔がそれぞれ同じリーグに所属したからであるが、「対決」と言われてもねえ、柔道やボクシングじゃあるまいし、野球もサッカーもチームスポーツなんだから、ちょっとズレてるなあ?という感がある。どうしても「日本人対決」を煽りたいのなら「松井が在籍するヤンキース対イチローが在籍するマリナーズの対戦」とか、「中田英寿が在籍するバルマVS中村俊輔の所属するレッジーナ」だろうが、これだとニュースインデックスとしてはちょっと長すぎるか・・・。ならば「日本人が所属するチーム同士の対戦」くらいなら収まるかな。
 松井とイチローが最初に顔を合わせた4月29日からの3連戦、ヤンキースタジアムには150人から200人に及ぶ日本からの報道陣が押し寄せたそうである。1社あたり3〜4人のスタッフとしても約50社ほどが集まった計算になるが、スポーツマスコミがそんなにあるとは思えない。と思っていたら、やはり、一般の週刊誌や女性誌までが混ざっていたそうで、いくらなんでも騒ぎ過ぎ、いや、はしゃぎ過ぎだろう。
 試合前のインタビューで、イチローが「日本人対決というだけで騒がれない日が早くくることを願っています」というような意味の事を言っていたが、まったく同感である。
 メジャーリーグにはメキシコ、ドミニカ、プエルトリコ、ベネズエラなどを中心にそれこそいろんな国から選手が集まってきている。だが、メキシコ人同士とかプエルトリコ人同士だからといって大騒ぎすることはない。あるいは逆に、日本のプロ野球でプレイしているアメリカ人が対戦したからといって大騒ぎになることもない。確かに現地マスコミも松井とイチローに対して関心を寄せてはいたが、それ以上に日本メディアの過熱取材のの方が大きく取り上げられ、皮肉られる記事が目立ったのも事実。毒舌で知られるイチローの同僚、ブレット・ブーンには「なんだ、なんだ、アカデミー賞授賞式でも始まるのかと思ったぜ!」などと言われる始末。もちろんこれはジョークだが、まだ日本人メジャーリーガー(特に野手においては)の歴史が浅く、数が少ないのでニュースソースとしては新鮮だということはわからないでもない。だが、今後、仮に日本人選手が続々とメジャーにやって来たとしてもイチローの願いはしばらくは叶わないだろう。
 松井とイチローはそれぞれ、日本ではセ・パ両リーグにおいて共にスーパースターであった。しかも、イチローは2シーズンですでにメジャーでもトップ・プレイヤーに位置する。日本のファンの注目を集めるという意味ではもうこの二人以上の選手はそうは残っていないのである。現にメジャーには後二人、新庄と田口がいる。引合いに出して申し訳けないが、新庄はキャンプ期間中4割近い打率を残し、さらにシーズンが始まってライバル外野手が相次いで故障者リストに入ったにもかかわらず、未だにレギュラー定着はしていない。田口にいたっては、やはり課題と言われた打撃でライバルを圧倒する成績を残しながら3Aに送られた。これについては監督の戦術や好みの問題もあるので、いちがいに数字を残せばいいということでもないが、どっちにしろ、取材対象として見た場合、松井・イチローに見劣りするのは否めない。それにしてもである。一カ所集中、右へ習い、偏向傾向にある日本マスコミの姿勢は今始まったことではないが、松井やイチローは芸能人ではないのだから、もっと、野球の本質、スポーツ報道の本質に立ち返った観点からの取材であって欲しいと願うばかりである。
 ま、そんなことは抜きにしても、我々の同胞が海外で活躍することは嬉しいものだ。古くはゴルフの岡本綾子や青木功、F1の中嶋悟の活躍に胸躍らせたし、最近ではサッカーで前述中田英寿を始め、小野伸二、中村俊輔などの活躍に一喜一憂している。他にも、現在は体調不良だが、ゴルフ米ツアーの丸山茂樹、年に一度だが、パリダカの篠塚健次郎、増岡浩などにも声援を送りたい。願わくばXゲームのスーパースター、安床兄弟や、WRCプロダクションカー部門で2連勝している新井敏弘などにもっと光を当ててもらいたいと思うのだが・・・。

2003.5.10

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