映画は大衆娯楽の中心、みんな銀幕のヒーローに酔いしれた。

 かつて映画はエンターティメントの王様だった。昭和30年代はじめには世界一の映画生産国だったのだよ。
 金はないけど、ヒマとエネルギーだけはあったあの頃・・無性に空虚で、せつないくらいに純粋で、ドアを開けて出てくる観客はみんなヒーローの顔をしてリキんでいたっけ。
 期待と羨望を一身に集め、全盛期を颯爽と駆け抜けていったイカした野郎とみめ麗しき銀幕の花。「みんなどこいっちまったんだよー!帰ってきてくれよ!」「いるんだろ?日本のどこかに」。
 彼(ヤツ)らは今日もどこかで活躍しているに違いない。夜霧の波止場、街のキャバレー、草原の牧場、小さな町工場。見かけたら、そっと教えてくれよな。待ってるぜ・・・

松王謡一[暗闇の観客席より]

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